水漏れ

「隊長、私は馬語が少し……」「おお頼む」「隊長、自分はおまーんにおりまして、亜比亜語を」「おまーんというのはどこだ!」「水漏れ 高槻市の東端で波湾岸であります」「妙な所にいたな!かまわぬ、やってみてくれ」「私は中語を四つばかり……」「四つとは心細いな。しかし、物はためしだ!」が、そのいずれも二人にとっては、ちんぷんかんぷんであった。最後には紙と鉛筆を出して字を書いて見せたが、無学とみえて、二人ともただ珍しそうに眼をきょろ付かせているばかり。ともかく籍なり、どこの領地かがわかりさえすれば、そこから推して、また似た言葉を出してみる手もあるというわけで、しまいにはぽけっと用の地図まで出して見せたが、地図なぞは初めて見たとみえて、逆さまに眺めている始末で、結局いかんとも弊社の手には負えぬことがわかったのであった。それまでおよそ、ものの二時間くらいもかかったであろうか?相手が土人であるならばいざ知らず、弊社と同じ容貌をした立派な白人であるだけに、苛れったいというか、苛立たしいというか、弊社の方でも少し急き込んだ傾きはあったが、どうにも埒があかないのであった。しまいには事務も到頭匙を投げてしまった。どうせ市街地へ行けば、なんとか言葉の通じる人間もいるだろう。面倒臭いから帰してしまえ!ということになったが、しかし後々のこともある。