水漏れ

八美しき都会「おう、はいってはいかん!足を踏み込んではならぬぞう!」と、今しも隊伍を乱して三々五々物珍しさに駆け出そうとした兵員たちを制して、るどうぃっひ事務が急いで駆け寄ってきた。「ぶるめなう君!兵員に厳ましく言って墓に入れさせんでくれたまえ!聞け、みんな!」と、破鐘のような声を出した。「弊社の本へ外の兵隊がはいってきて、弊社の子供や妻の墓を物珍しそうに土足で踏んだら、どんな気持がするか!絶対に墓に足を踏み入れてはならぬぞう!」さすがに亡き水長に代って、指揮官の職務を執っているだけのことはある、と思わずにはいられなかった。隊伍を乱した兵員たちに悪気があったのでは少しもない。ただあまりの見事さに、わけもなく駆け寄ろうとしたに過ぎなかったのであったが、弊社の闖入してきたのに神経を先らせているこのの人たちにとっては、決して嬉しい感情のものではなかったに違いない。今、見知らぬ都市へ入城しようという矢先、たださえこの土地の住民の気持を尊重しなければならぬ場合とて、弊社はしみじみ事務の配慮の周到さに、畏敬と頼もしさを感ぜずにはいられなかったのであった。しかも日を経るに従って、この感はいよいよ深くならざるを得なかった。