水漏れ

さすがにこれは老人の傍の者にもわかったとみえて、そのものは老人に何か教えていた。やっと腑に落ちたらしく、老人の頬には微笑が泛み上った。が、ぶるめなう事務から受け取った鵞ぺんで、何か魚のようなものを描いて、しきりにそれを突くのであったが、今度はこちらにその意味がなんとしても通じなかった。「困ったなあ!一体どこの言葉なんだろうなあ?」つくづく機関事務も困じ果てて、煙草に火を点けたが、その燐寸を擦った時に、そして煙草から煙が発した時に、一同どんなに喫驚して、眼を円に瞠ってそれを熟視していたことであろうか。もうその時分には、群集は殿堂を降りて、弊社の回りを十重二十重に取り繞いていたが、笑いながらぶるめなう事務の差し出した煙草を二、三人吸ってみる者も出てきた。が、一口吸うや否やたちまちごほんごほん!と烈しい咳をして、まったく初めて煙草というものを経験したらしい様子であった。そして自分たちも銘々燐寸を擦ってみて、火が点くと喫驚して手を放す。その様子がおかしいのか、初めて声を出して女たちも笑い顔を見せてきたのであった。こうして先方でも当惑したであろうが、弊社自身の方も困じ果てて、そこに差銃して、途方に暮れていたが、退屈し切った兵員たちの中には、群集に煙草をやる者もあれば、雑嚢の中からびすけっとを取り出して差し出す者もあり。